<とよなか ゆめ・まち・ひと リレーエッセー> “ TOYONAKA ”  昭和36年(1961)3月27日、僕は当時駅前にあった豊中市民病院で産まれました。祖父 孝之助、父 吉弘から孝弘と名付けられました。  今からは考えられませんが、3千800グラムの大きな赤ちゃんだったそうです。  この街で過ごしたのは僅(わず)か9年足らずでしたが、思い出深い事はいくつもありました。  僕が3歳になった頃、小さいながらも上野の新しい家に引っ越した事、母と弟と梅花幼稚園にバスに乗って通園していた事、上野小学校で担任をしてくださった住友先生、校庭の鉄棒から落っこちて顔を擦りむいた事、休日豊中高校のグラウンドで遊んだ事、駅前の理髪店、小旅行だった東豊中の山の上の神社、父がよく連れて行ってくれたお寿司屋さん等々。  平成13年「華」というソロアルバムのジャケット撮影で上野小学校を訪れる機会に恵まれました。校舎、グラウンド、意外に当時の面影がそのまま残っていた事が嬉(うれ)しく、本当に懐かしく思いました。 友達にも恵まれ、好きな女の子もいたのですが、小学校3年生の夏、父の転勤で豊中を離れたのでした。ちょうど万博が開催された頃です。豊中に帰りたくて帰りたくて…正直両親に隠れて泣きました。その後も叔父が豊中に居たので、事ある毎に親に頼み込んで帰郷していました。叔母が焼いてくれるたこ焼きも里帰りの楽しみのひとつでした。  それから月日は経ち、ティーンエイジャーになった僕は東京で音楽を志しました。20歳でこの世界に入り、セッションミュージシャンを経て昭和63年、Bʼzとしてデビューを果たし、今日までに53枚のシングル、19枚のアルバム、そして千本以上のコンサートを行ってきましたが、遂に今年平成29 年7月23日、最新の豊中市立文化芸術センターにてコンサートを開催させて頂く事が出来ました。僕にとってとても感慨深い、感動的な時間でした。この地に産まれてから半世紀余りを経て、こういった形で故郷に帰って来れた事を誇りに思います。  豊中という街で生を受けた事に心から感謝しています。 松本孝弘(まつもとたかひろ) [ミュージシャン]  豊中市生まれ。結成30周年を迎えるB’ z のプロデュース、ギター、全作曲を担当。B’ z の活動と並行して多彩なソロ作も発表し、平成23年(2011)にグラミー賞を受賞。日本人初のポップス部門での受賞という快挙とともに、世界的なギタリストとしての栄誉に輝いた。今年11月にB’ z の最新アルバム「DI NOSAUR」を発売、12月から全国ツアーを開催する。 【奇数月は「リレーエッセー」、偶数月は「豊中っ子」を掲載します】 <とよなか風物詩> パンジー【スミレ科/スミレ属/一年草】  庭や玄関前、街角のプランターなど、花の少ない季節の花壇を鮮やかに彩ります。祖先はヨーロッパの野山に咲くかれんなスミレ。花色や大きさ、咲き方など、さまざまな種類があり、世界中で親しまれます。名前はフランス語のパンセ(思想)に由来。花の姿や下を向くつぼみの様子が物思う人の顔や姿に似ているからといわれます。 花の見頃は11月~ 5月。 豊島公園(曽根南町)、ふれあい緑地(服部西町)などで見られます。