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川の殿様

ページ番号:499689964

更新日:2014年4月8日

「川の殿様」の絵
絵 … 橋本憲治

お話

むかしむかし

 いや、これは思い出すのも気味が悪い。

酒にさんざん酔(よ)うて、かわたろうの渡(わた)しあたりを霧(きり)の深(ふか)いなか、ふらついとると、いつのまにか、どこにこんな大きなと思える御殿(ごてん)に迷(まよ)いこんでしもた。外に出ようとすると、奥(おく)へ奥へとはいりこんで、とうとう人声がぼそぼそと聞こえる。

 一番奥の御殿を陰(かげ)からのぞくと、殿上人(てんじょうびと*)が大勢集まってさめざめと泣いておる。上座(かみざ)に二人の貴人(きじん)がすわっておられて、明かりといえばそのうちの一人の袖や肩からちろちろと燃(も)える鬼火(おにび)というか火花というか、それしかない。

 声はよう聞こえんが、どうやらここの主人は都で人のざんげん*におうて都を追われ、この地でうらみをのんで亡くなった人らしい。

 死ぬ時に

 「わしはこうして死んで行くが、人の生き血を吸(す)わぬでおくものか」
と言い残したそうな。

 「じゃから、今でも人の生き血を吸うておるのじゃ」
と一番偉(えら)い人らしい貴人が言うた。

 殿上人たちのすすり泣きはいっそう高まったが、二番めに偉そうな人の火花で見えたその顔は皆、なまずやかえる、たうなぎ、いもり、いやいやおぞましい水族(すいぞく*)の者ばかり。

 気が遠くなって、見つかった時は川につかってわしは死にかけとったらしい。

 「しっかりせい、かわたろうに血を吸われたか!」と活を入れられると、

 「いや、川の殿様(とのさま)におうてしもた」と答えたというのやがよく覚(おぼ)えておらん。

 そういえばこのあたり、よく水死人がでたようじゃ。

*天上人-御殿にあがることを許された人
*ざんげん-人をおとしいれるためにありもしないことを目上の人に告(つ)げ悪くいうこと
*水族-水中に棲息(せいそく)する動物

語り(mp3データ)

語り手 … 豊中おはなしの会
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