障害を理由とする差別の解消の推進に関する豊中市職員対応要領 令和7年(2025年)4月実施 障害を理由とする差別の解消の推進に関する豊中市職員対応要領 目次 第1章 趣旨  1 根拠法令  2 対応要領の目的  3 法制定の背景と考え方  4 対応要領の対象範囲 (1) 障害者(障害者基本法第2条) (2) 職員 (3) 対象分野 (4)「合理的配慮」の範囲  5 対応要領に記載されている事例の取扱  6 作成及び見直し手続 コラム:公共サービス窓口で働く職員が配慮すべき基礎的事項 第2章 障害を理由とする不当な差別的取扱及び合理的配慮の基本的な考え方  1 障害を理由とする不当な差別的取扱の禁止(法第7条第1項) (1) 障害を理由とする不当な差別的取扱の定義 (2) 判断の視点 (3) その他留意すべき点  2 合理的配慮を行う義務(法第7条第2項) (1) 合理的配慮の定義 (2) 判断の視点 (3) 環境の整備との関係 第3章 障害を理由とする不当な差別的取扱及び合理的配慮の具体例  1 「障害を理由とする不当な差別的取扱」の具体例  2 「合理的配慮」の具体例 (1) 物理的環境への配慮 (2) 情報の取得、利用及び意思疎通への配慮 (3) ルール・慣行の柔軟な変更 第4章 相談体制の整備(法第14条) 第5章 職員等への研修  1 本市における職員に対する研修  2 受託事業者等における研修 様式1 合理的配慮の申出又は障害者差別に関する相談の報告について 様式2 合理的配慮の申出又は障害者差別に関する相談 報告書 資料(障害特性と必要な配慮)  視覚障害  聴覚・言語障害  盲ろう(視覚と聴覚の重複障害)  肢体不自由  内部障害・難病に起因する障害  知的障害  重症心身障害  精神障害  発達障害  高次脳機能障害 資料(参考リンク) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する豊中市職員対応要領 第1章 趣旨 1 根拠法令   障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)第10条第1項 2 対応要領の目的   法は、行政機関等の事務・事業の公共性から、障害者差別の解消に率先して取り組む主体として、不当な差別的取扱の禁止及び合理的配慮の提供を行政機関等の法的義務とし、その職員による取組を確実なものとするため、対応要領を定めることを求めています。 この障害を理由とする差別の解消の推進に関する豊中市職員対応要領(以下「対応要領」という。)」は、法に基づいて、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなどについて基本的な考え方や具体的な事例等をわかりやすく記載することで、障害を理由とする差別について、職員の関心と理解を深めるために作成したものです。また、併せて、職員の適切な対応に必要な相談窓口や、職員の適切な対応を身につけるための職員研修等についても記載しています。 3 法制定の背景と考え方 令和4年度(2022年度)に『豊中市第六次障害者長期計画』策定のために障害のある市民に対して行った意識調査においても、回答者の約30%が差別を受けたり嫌な思いをした経験があると回答しています。 差別の事例を見ると、社会における障害や障害者に対する理解不足が原因と思われることが少なくありません。この理解不足によりつくられた社会の仕組みや意識が、障害者の生きにくさにつながっています。 法は、障害者と障害のない人が理解し合うこと(相互理解)により、共生社会の実現をめざしています。 障害を理由にした差別かどうか判断に迷うことがあった場合には、どのように対応すればよいのかを考え、対話し、理解し合うツールの一つとしてこの対応要領を活用していきます。 さらに、この対応要領を公表することで、市民一人ひとりの、障害に関する正しい知識の取得や理解が深まり、障害者との建設的対話による相互理解が促進され、取組の裾野が一層広がることを期待するものです。 現在において障害のない人も、病気や事故、高齢化により、日常生活や社会生活で不便を感じ、様々な配慮を必要とするようになることも考えられます。障害者に対する配慮は、すべての人への配慮につながります。障害を理由とする差別をなくす取組を進めることは、誰もが暮らしやすい共生社会をつくっていくことになります。誰もが暮らしやすい共生社会をつくっていくために、障害の有無にかかわらず共に助け合い・学び会う精神の涵養が必要です。 4 対応要領の対象範囲   (1) 障害者(障害者基本法第2条) 対象となる障害者は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。以下「障害」と総称する。)がある人であって、障害及び社会的障壁※1により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある人です。 ※1 障害者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるようなもの(以下は例) @ 社会における事物(通行・利用しにくい施設・設備など) A 制度(利用しにくい制度など) B 慣行(障害者の存在を意識していない慣習・文化など) C 観念(障害者への偏見など)※法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られません。 ※特に、障害に加えて性別、国籍、年齢により、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意します。 ※障害特性と必要な配慮については資料に掲載しています。 (2) 職員 全ての市職員(再任用職員、会計年度任用職員、任期付職員等全ての雇用形態を含む。)及び本市業務の受託事業者や指定管理者(再委託または第三者委託を受ける者を含む。以下「受託事業者等」という。)のうち市民と接する機会のある業務を行うもの ※教職員を含みます。 (3) 対象分野 本市が事務・事業を行う分野が、広く対象となります。 ただし、本市が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされています。 (4) 「合理的配慮」の範囲 この対応要領は、「障害を理由とする不当な差別的取扱」及び「合理的配慮」などについて基本的な考え方や具体的な事例等をわかりやすく記載するものですが、「合理的配慮」と密接な関わりを持ち、かつ、障害者及び関係者から要望が多いものの中に「環境の整備」があります。 「合理的配慮」は、個々の場面において、障害者から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合に、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために、職員が個別に行うものです。詳しくは第2章2以降を参照ください。 一方、「環境の整備」は、不特定多数の障害者を主な対象として、事前に行われる恒常的な改善措置で、組織的対応と多くの場合予算を伴い、議会による審議等、既存の市の意思決定プロセスを経て実施していくものです。この「環境の整備」についても、関係法令、投資負担の軽減をもたらす新しい技術開発の動向をふまえ、『豊中市第六次障害者長期計画』の進行管理を行いながら推進していきます。 両者の違いは、次の表のとおりです。 判断の視点 ・合理的配慮 個々の場面において、障害者から何らかの配慮を求める意思の表明があった場合に、負担になりすぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮。 →職員の個別の配慮により対応。 ・環境の整備   不特定多数の障害者を主な対象として、事前に行われる恒常的な改善措置。 →市としての組織的対応により、障害者差別の解消に向けた取組として計画的に推進する。 行政機関の義務 ・合理的配慮 法的義務(法第7条第2項) ・環境の整備 努力義務(法第5条) ※他の法令により義務となっているものもある。 例 ・合理的配慮 ○聴覚障害者に対して筆談で説明する。 ○視覚障害者のため、代読する。 ○車いすの人が段差のある場所に行くために、車いすを持ち上げる。 ○継続的な通院や服薬が必要なときには、休暇や休憩などについて配慮する。 〇ゆっくりはっきりと話したり、コミュニケーションボードなどを用いたりして意思疎通を行う。 〇書籍やノートなどを用いた読み書きに困難があるときには、タブレットなどの補助具を用いることができるようにする。 ・環境の整備 ○コミュニケーションを支援したり、介助を行う職員の加配。 ○庁内放送の内容を庁内の壁に掛けた掲示板にも載せる仕組みの整備。 ○市施設等のバリアフリー化。 ○市ホームページのユニバーサルデザイン化。 ○市民に送付する文書、チラシ、ポスター等について、文字の大きさや色彩のコンストラストに配慮する。また、読みにくい漢字にはルビ打ちをする。 ○職員研修   5 対応要領に記載されている事例の取扱 記載された事例がすべてではありません。不当な差別的取扱となりうる事例に記載されていないものは差別ではないということではありません。また、記載されている事例であっても、差別に当たるかどうかは、個別の事例ごとに判断する必要があります。 合理的配慮は障害の特性や配慮が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様で個別性の高いものですので、対応要領では望ましい合理的配慮の事例を記載していますが、この事例以外にも合理的配慮に該当するものはあるので、各職場での取組をお願いします。 6 作成手続及び見直し手続 市長は、対応要領の作成に当たり、障害者その他の関係者の意見を反映させるために障害者その他の関係者を構成員に含む豊中市障害者施策推進協議会の部会の意見を聞くとともに、作成後は、対応要領を公表します。 技術の進展、社会情勢の変化等は、特に、合理的配慮について、その内容、程度等に大きな進展をもたらし、また、実施に伴う負担を軽減し得るものです。市長は、法の施行後においては、こうした動向や、不当な差別的取扱及び合理的配慮の具体例の集積等をふまえるとともに、国際的な動向も勘案しつつ、必要に応じて、対応要領を見直し、適時、充実を図るものとします。 「第2章 障害を理由とする不当な差別的取扱及び合理的配慮の基本的な考え方」に入る前に、公共サービス窓口で働く職員が配慮すべき基礎的事項を以下にまとめます。 1)相手の「人格」を尊重し、相手の立場に立って応対します ・相手の立場に立って「明るく」「ていねいに」分かりやすい応対を心がけます。 ・介助の方や手話通訳の方等ではなく、障害のある人本人に直接応対するようにします。 ・何らかの配慮が必要と思う場合でも、思い込みや押し付けではなく、本人が必要と考えていることを確認します。 ・車いすの人に対応する際には姿勢を低くするなど、目線が同じになるように対応します。 2)障害の有無や種類に関わらず、困っている方には進んで声をかけます ・窓口を訪れる方の障害の有無や種類は明確でないため、常に来訪者の中に障害のある方も含まれていることを念頭に置いて、困っていそうな状況が見受けられたら、速やかに適切な対応をするようにします。 ・障害の種類や内容を問うのではなく、「どのようなお手伝いが必要か」を本人にたずねます。 3)コミュニケーションを大切にします ・コミュニケーションが難しいと思われる場合でも、敬遠したり分かったふりをせず、「ゆっくり」「ていねいに」「くり返し」相手の意思を確認し、信頼感の持てる対応をこころがけます。 4)柔軟な応対を心がけます ・相手の話を良く聞き、訪問目的を的確に把握し、「たらい回し」にしないようにします。 ・応対方法がよく分からないときには、一人で抱えず周囲に協力を求めます。 ・想定外のことがおきても、素早く柔軟に対応します。 5)不快になる言葉は使いません ・差別的な言葉はもとより、不快に感じられる言葉や子ども扱いした言葉は使いません。 ・障害があるからといって、ことさら特別扱いした言葉は使いません。 6)プライバシーには立ち入りません ・障害の原因や内容について、必要がないのに聞いたりしません。 ・仕事上知り得た個人の情報については、守秘義務を守ります。 障害者施策推進本部(事務局:内閣府)発行『公共サービス窓口における配慮マニュアル』(平成17年(2005年))より抜粋 第2章 障害を理由とする不当な差別的取扱及び合理的配慮の基本的な考え方 1 障害を理由とする不当な差別的取扱の禁止(法第7条第1項) 職員は障害者に対して、不当な差別的取扱を行ってはならない。 (1) 障害を理由とする不当な差別的取扱の定義 障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、 ○市が行う給付及びサービスや各種機会の提供を拒否する ○提供に当たって場所・時間帯などを制限するなど、障害者でない者に対しては付さない条件を付ける 〇補助犬、車いすや視覚障害者が使用する音声読み上げ機器など支援機器の利用、介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱 などにより、障害者の権利利益を侵害すること。 (2) 判断の視点 @正当な理由がある場合 客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。 正当な理由に相当するか否かについて、個別の事案ごとに、障害者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、 損害発生の防止等)及び本市の事務・事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。   A不当な差別的取扱とはならない場合 障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱ではありません。 ○障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱(いわゆる積極的改善措置) ○障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱 ○合理的配慮を提供等するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認すること (3)その他留意すべき点 各職場において正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明するものとし、理解を得るよう努めます。その際、職員と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら相互理解を図ることが求められます。   2 合理的配慮を行う義務(法第7条第2項) 職員は障害者に対して、合理的配慮を行わなければならない。 (1)合理的配慮の定義 その事務・事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について行う、必要かつ合理的な配慮のこと。 国の基本指針では、「物理的環境への配慮」「意思疎通への配慮」「ルール・慣行の柔軟な変更」の3つのカテゴリを挙げています。 (2) 判断の視点 ○合理的配慮は、本市の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られ、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのもので、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要があります。 ○その提供に当たってはこれらの点に留意した上で、当該障害者が現に置かれている状況をふまえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、後述する過重な負担の基本的な考え方の要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされる必要があります。建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と職員がともに考えていくために、双方がお互いの状況の理解に努めることが重要です。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策や、当該行政機関として対応可能な取組等を対話の中で共有する等、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられます。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わりうるものです。 ○意思の表明は、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。 また、障害者からの意思表明のみでなく、知的障害や精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含みます。 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合など、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な配慮に努めます。 ○過重な負担については、各職場において、個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断します。 ○事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) ○実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) ○費用・負担の程度や財政・財務状況 ○事務・事業規模 〇職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましいです。その際には前述のとおり、職員と障害者の双方が、お互いに相手の立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められます。 ○合理的配慮の提供に当たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮し、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意します。 (3) 環境の整備との関係 ア 環境の整備の基本的な考え方 法は、個別の場面において、個々の障害者に対して行われる合理的配慮を的確に行うための不特定多数の障害者を主な対象として行われる事前的改善措置(施設や設備のバリアフリー化、意思表示やコミュニケーションを支援するためのサービス・介助者等の人的支援、障害者による円滑な情報の取得・利用・発信のための情報アクセシビリティ※2の向上等)を、環境の整備として行政機関等及び事業者の努力義務としています。環境の整備においては、新しい技術開発が投資負担の軽減をもたらすこともあることから、技術進歩の動向を踏まえた取組が期待されます。また、ハード 面のみならず、職員に対する研修や、規定の整備等の対応も含まれることが重要です。 障害を理由とする差別の解消のための取組は、法や高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)等不特定多数の障害者を対象とした事前的な措置を規定する法令に基づく環境の整備に係る施策や取組を着実に進め、環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要です。 ※2 年齢や身体障害の有無に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できること。  イ 合理的配慮と環境の整備   合理的配慮は、障害者が受ける制限は、機能障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル※3」の考え方をふまえたものです。 環境の整備は、不特定多数の障害者向けに事前的改善措置を行うものですが、合理的配慮は、環境の整備を基礎として、その実施に伴う負担が過重でない 場合に、特定の障害者に対して、個別の状況に応じて講じられる措置です。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異 なることとなります。 なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあらかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うことや、相談・ 紛争事案を事前に防止する観点からは合理的配慮の提供に関する相談対応等を契機に、行政機関等及び事業者の内部規則やマニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることは有効です。また環境の整備は、障害者との関係が長期にわたる場合においても、その都度の合理的配慮の提供が不要となるという点で、中・長期的なコストの削減・効率化にも資することとなります。 合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、環境の整備を考慮に入れることにより、より人権を尊重した市政運営や、中・長期的なコストの削減・効率化につながることを念頭に、対応を検討していきます。 ※3 障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものであるととらえる考え方 第3章 障害を理由とする不当な差別的取扱及び合理的配慮の具体例   1 「障害を理由とする不当な差別的取扱」の具体例 正当な理由がなく、不当な差別的取扱に該当すると考えられる例及び正当な理由があるため、不当な差別的取扱に該当しないと考えられる例は以下のとおりです。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないことと、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに判断することが必要であること、正当な理由があり不当な差別的取扱に該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意します。   【「障害を理由とする不当な差別的取扱」に該当すると考えられる具体例】 (1)正当な理由なく、障害を理由として、市が行う給付及びサービスや各種機会の提供について、拒否する ○障害があることを理由に、窓口対応を拒否する。 ○障害があることを理由に、市施設の利用を拒否する。 ○市施設で、身体障害者補助犬※4を同伴することを拒否する。 ※4 次の3種類です。 @盲導犬(視覚障害者が安全に快適に歩くお手伝いをする) A聴導犬(タッチをするなど色々な動作を使って聴覚障害者に音を知らせる) B介助犬(ドアの開閉・指示された物を持ってくる、不測の事態が起きた時に人を呼びに行くなど日常生活の手助けをする) 注)身体障害者補助犬法は、国や地方自治体が管理する施設に対し、補助犬同伴を拒むことを原則禁止しています。また、補助犬を使う身体障害者は、補助犬の体を清潔に保つとともに、予防接種及び検診を受けさせることにより、公衆衛生上の危害を生じさせないよう努める義務があります。 ○障害のある子どもに対し、障害の特性に応じた代替案の検討等の配慮も無しに、体育や実習科目への参加を拒否する。 〇障害の種類や程度、サービス提供の場面における本人や第三者の安全性などについて考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否する。 (2) 正当な理由なく、障害を理由として、市が行う給付及びサービスや各種機会の提供に当たって場所や時間帯などを制限するなど、障害者でない者に対しては付さない条件を付ける ○障害があることを理由に、対応の順序を後回しにする。 ○障害があることを理由に、書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒否する。 ○障害があることを理由に、説明会等への出席を拒否する。 ○事務・事業の遂行上、特に必要ではないにも関わらず、障害のあることを理由に、来庁の際に付き添い人の同行を求めるなどの条件を付ける。 〇業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる場所での対応を行う。 〇障害があることを理由として、障害者に対して、言葉遣いや接客の態度など一律に接遇の質を下げる。 (3) 正当な理由なく、障害を理由として、社会的障壁を解消するための手段(補助犬、車いすや視覚障害者が使用する音声読み上げ機器など支援機器の利用、介助者の付添い等)の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱 〇特に支障がないにもかかわらず、障害を理由に付き添い者の同行を拒む。 【「障害を理由とする不当な差別的取扱」に該当しないと考えられる具体例】 (1)正当な理由があるため、不当な差別的取扱に該当しないと考えられる例 〇実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害特性のある障害者に対し、当該実習とは別の学習を設定する。(障害者本人の安全確保の観点) 〇車いす利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷く等、畳を保護するための対応を行う。(行政機関の損害発生の防止の観点) 〇行政手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ、障害者本人に対し障害の状況や本人の手続の意思等を確認する。(障害者本人の損害発生の防止の観点) 2 「合理的配慮」の具体例   以下の事例は、あくまでも例示で、必ず実施するものではないこと、記載されている例以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意する必要があります。   (1)物理的環境への配慮 ○段差にスロープを渡す。 ○手の届かないところに設置された申込書類を取って渡す。 ○障害により文字の記入が難しい人の求めに応じて、代筆をする。また、片手でも書類への記入ができるよう、滑りにくいマットや文鎮を使っていただく。 注)視覚障害者のため代筆した場合、代筆内容は本人に見えないので、その読み上げを行うか本人に確認する。 〇イベント会場において知的障害のある子どもが発声やこだわりのある行動をしてしまう場合に、保護者から子どもの特性やコミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着かない様子の時は個室等に誘導する。 〇視覚障害のある者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室を案内する。その際、同性の職員がいる場合は、障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内する。 (2)情報の取得、利用及び意思疎通への配慮 ○会話するときは、平易な表現を用い、相手にとって聞き取りやすい声の大きさ、話す速度で、丁寧に話す。理解が難しいと感じられたときは、短い具体的な文章で「ゆっくり」「丁寧に」「繰り返し」説明する。なお、耳で聞いただけではわかりにくい場合は、文章や図で示しわかりやすく伝える方法もあ る。また、不安感を生じさせないよう、穏やかな対応を心がける。 ○聴覚障害者と会話するときは、口の動きがはっきり分かるように配慮したり、筆談・手話を用いる、視覚障害者には読み上げ・点字・拡大文字・触覚による意思伝達等のコミュニケーション手段を用いるなど、本人の希望を確認して柔軟な対応を行う。 ○思うように口などを動かしにくく、お話が聞き取りにくい人と会話をするときは、わかったふりをせず、一語一語確認するようにする。 ○障害により周囲の状況を認識する力が妨げられたことから生じる不安から来庁目的をつかみかねる話を繰り返される場合、その話に耳を傾けて気持ちが落ち着かれたときを見計らって、用件を聞く。用件に入ることが難しいときは「用件がわかったらまた来てください」と穏やかに伝え、「拒否された」という感情が残らないようにする。 ○視覚障害者に文書を送付する際は、本人の希望を確認して、拡大文字、点字、電子メールの活用など、柔軟な対応を行う。 ○講演会や会議の時に、手話通訳者や要約筆記をつける、スライド使用時に言葉での説明もつけるなど、目と耳と双方から情報を得られるよう、配慮する。 (3)ルール・慣行の柔軟な変更 ○外出が困難な人に対して、郵送での手続を認める。 ○障害の特性に応じた休憩時間の調整を行う。 ○プライバシーに配慮した対応が必要な場合には、面談室等を利用する。 ※本人から申出があった場合はもちろん、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)や内部障害等、外見からはわからない障害がある人の中には、障害があることを人に知られたくないと思っている人もいます。 ○パニックになった人を、一人になって落ち着くことができる場所に案内する。 ○複数課をまたぐ手続が必要な場合、必要であれば次の課まで誘導する。 また、合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び該当しないと考えられる例としては、次のようなものがあります。なお、記載されている内容はあくまでも例示であり、合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては、個別の事案ごとに判断することが必要であることに留意します。 【「合理的配慮」の提供義務違反に該当すると考えられる具体例】    〇試験を受ける際に筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断ること。 〇イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断ること。 〇電話利用が困難な障害者から、電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、マニュアル上、当該手続は利用者本人による電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メールや電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに対応を断ること。 〇介助を必要とする障害者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があった場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受講者である障害者本人の個別事情や講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助者の同席を断ること。 〇自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーンや板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保などの対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断ること。 【「合理的配慮」の提供義務違反に該当しないと考えられる具体例】 〇事務の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提供を断ること。 (必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点) 〇抽選申込みとなっている講座への参加について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、講座への参加を事前に確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断ること。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点) 〇イベント当日に、視覚障害のある者から職員に対し、イベント会場内を付き添ってブースを回ってほしい旨頼まれたが、混雑時であり、対応できる人員がいないことから対応を断ること。(過重な負担(人的・体制上の制約)の視点) 第4章 相談体制の整備(法第14条) 障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要であり、とりわけ障害者本人からの相談に対応する際には、障害の特性や状況等に配慮することが重要です。 障害者差別に限定した新たな相談機関は設置せず、案件の内容に応じた既存の相談窓口を明確にするとともに、相談などに対応する職員の業務の明確化などを図ることにより、障害者差別の解消の推進に資する体制を整備します。 各既存相談窓口に障害者差別に係る相談が入ったときの対応は、以下のとおりとします。相談対応が終わり次第、その概要を様式1及び2にて障害福祉課に提出してください。また、各職場での対応について合理的配慮を求められたときの対応についても、その概要を様式1及び2にて障害福祉課に提出してください。今後の対応に活かすため、相談状況を集約します。 @ 場面  障害者が既存相談窓口で、そこの所管内容に合う相談をしたとき 例 解雇されたことは障害者差別による不当解雇だとの相談を、労働相談窓口で受けた。 対応  既存窓口で従来どおり対応する。 A 場面 障害者が既存相談窓口で、別の相談窓口が所管する内容の相談をしたとき 例 解雇されたことは障害者差別による不当解雇だとの相談を、障害者相談支援センターで受けた。 対応  その相談内容を所管する相談窓口を案内する。 B 場面 差別としての対応より、虐待としての対応が妥当と思われる相談があったとき 対応 豊中市障害者虐待防止センターが対応する。 注)在宅の障害児に対する家族からの虐待は、こども安心課 C 場面 豊中市の特定部署の対応が障害者を差別しているとの相談を受けたとき 対応 当該部署が、相談者への対応を行う。 D 場面 市出資法人等の対応が障害者を差別しているとの相談を受けたとき 対応 当該市出資法人等との連絡調整を担当する課が、当該市出資法人等に、相談者への対応と結果報告を求める。 E 場面 福祉サービス事業所の対応が障害者を差別しているとの相談を受けたとき 対応 健康福祉サービス苦情調整委員会(地域共生課)が、対応する。 F 場面 福祉サービス以外の民間事業者の対応が障害者を差別しているとの相談を受けたとき 対応 民間事業者との連絡調整の主となる課(なければ障害福祉課企画係)が、当該事業所に、相談者への対応と結果報告を求める。 G 場面 個人・地域組織の対応が障害者を差別しているとの相談を受けたとき 対応  〇個人の場合、相談を受けた既存相談窓口が対応する。 ○地域組織の場合、地域組織との連絡調整を行う課か相談を受けた既存相談窓口が対応する。 相談が入りうるところ:人権相談、障害福祉課、障害者相談支援センター 第5章 職員等への研修 1 本市における職員に対する研修 本市においては、職員一人ひとりが障害者に対して適切に対応し、また、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に対応するため、法の趣旨の周知徹底、障害者から話を聞く機会を設けるなどの研修等を実施することにより、職員の障害に関する理解の促進を図るものとします。 2 受託事業者等における研修 市民と接する機会のある業務を行う受託事業者等との契約または協定においては、当該受託事業者等に対し、障害者に対して適切に対応するため、人権研修の実施及びその実施結果の報告を求めることで、法の趣旨の普及を図るとともに、受託事業者等による障害に関する理解の促進に努めるものとします。 附則 この要領は、平成28年4月1日から実施する。 附則 この要領は、令和7年4月1日から実施する。 (様式省略) 資料(障害特性と必要な配慮):視覚障害 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 視覚障害には、全く見えない場合(全盲)と見えづらい場合(視機能の障害)があります。 見えづらい場合 ・細部がよくわからない ・光がまぶしい ・暗いところで見えにくい ・見える範囲が狭い(視野の一部が欠けたり、望遠鏡でのぞいているような見え方) ・特定の色がわかりにくい 主な特徴 ・一人で移動することが困難 慣れていない場所では一人で移動することが難しい方が多いと言われています。 ・音声を中心に情報を得ている 視覚から情報が得にくいため、音や音声、手で触ることにより情報を入手しています。 ・文字の読み書きが困難 文書を読むことや書類に文字を記入することが難しい方が多いです。 【必要な配慮】 ・驚かせることのないように正面から「私は○○ですが何かお手伝いしましょうか?」と声をかける ・誘導する際には、声かけをした上で、本人の希望を確認し、介助者の腕や肩をつかんでもらい、歩く速さを相手に合わせ、小さな段差などについても情報提供する ・「こちら」「あちら」などの指示語ではなく「30センチ右」「2歩前」というように位置関係を分かりやすく伝える ・資料を拡大文字や点字によって作成したり、資料の内容を読み上げて伝えたりする ・パソコンなどで読上機能を使えるように資料のテキスト形式データを提供する ・本人の意思を十分に確認しながら書類の記入やタッチパネルの操作などを代行する ・受付などの対応時には「どうぞ」と最初にひと声かけ、途中に席を外すなど対応状況が変わる時にも、その旨を伝える 資料(障害特性と必要な配慮):聴覚・言語障害 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 聴覚障害には、全く聞こえない場合と聞こえにくい場合があります。言語障害を伴う場合とほとんど伴わない場合もあり、言語障害のある場合にはその状況等に応じて他者とのコミュニケーションに困難を生じる場合があります。 主な特徴 ・外見から分かりにくい 外見からは聞こえないことが分かりにくいため、挨拶したのに返事をしないなどと誤解されることがあります。 ・視覚を中心に情報を得ている 音や音声による情報が得にくく、文字や図などの視覚により情報を入手しています。 ・声に出して話せても聞こえているとは限らない 聴覚障害のある方の中には声に出して話せる方もいますが、相手の話は聞こえていない場合があります。 ・補聴器や人工内耳をつけても会話が通ずるとは限らない 補聴器や人工内耳をつけている方もいますが、それらを使用しても、明りょうに聞こえているとは限らず、相手の口の形を読み取るなど、視覚による情報 で話の内容を補っている方も多いです。 【必要な配慮】 ・筆談、手話、コミュニケーションボードなどの目で見て分かる方法を用いて意思疎通を行う ・字幕や手話などの見やすさを考慮して座席配置を決める ・窓口で順番を知らせるときには、アナウンスだけでなく身振りなどによっても伝える ・難聴者がいるときには、ゆっくりはっきりと話したり、複数の発言が交錯しないようにする ・言語障害により聞き取りにくい場合に分かったふりをせず、内容を確認して本人の意向に沿うようにする ・筆談では、長文だと内容を理解しにくくなるため、短く簡潔に書き、必要に応じて記号や図を用いて、分かりやすく表現することを心がける 資料(障害特性と必要な配慮):盲ろう(視覚と聴覚の重複障害) 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))、厚生労働省『障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 視覚と聴覚の重複障害の人を「盲ろう」と呼んでいますが、障害の状態や程度によって様々なタイプに分けられます。見え方や聞こえ方の程度によって様々なタイプに分けられ、大きく4つのタイプがあります。 見えない聞こえない 全盲ろう 見えない聞こえにくい 全盲難聴 見えにくい聞こえない 弱視ろう 見えにくい聞こえにくい 弱視難聴 主な特徴 ・見え方の違い、聞こえ方の違いに加え、コミュニケーション方法もさまざまです 【必要な配慮】 ・障害の程度(全盲ろう、全盲難聴、弱視ろう、弱視難聴)に応じたコミュニケーション方法を確認して用いる ・手のひらに〇、×、文字などを書いて周囲の状況を伝える ・模型などを用いて触覚によって把握できるようにする 資料(障害特性と必要な配慮):肢体不自由 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 肢体不自由のある方の中には、上肢や下肢に切断や機能障害のある方、座ったり立ったりする姿勢保持が困難な方、脳性マヒの方などがいます。また、移動については、杖や松葉杖、義足、電動の車いす等を使用する方、自力歩行の方などがいます。運動機能を補完するため、義肢・装具・車いす等の補装具を利用しています。 主な特徴 ・移動に制約のある方もいる 下肢に障害のある方は、段差や階段、手動ドアなどがあると、一人では進めない、歩行が不安定で、転倒しやすいなどの制約があります。 車いすを使用されている方は、高い所には手が届きにくく、床のモノは拾いにくいといわれています。 ・文字の記入が困難な方もいる 手にマヒのある方や脳性マヒで不随意運動を伴う方などでは、文字を記入できなかったり、狭いスペースに記入することが困難な場合があります。 ・体温調節が困難な方もいる 脊髄を損傷された方では、手足が動かないだけでなく、感覚もなくなり、周囲の温度に応じた体温調節が困難な場合があります。 ・話すことが困難な方もいる 脳性マヒの方の中には、発語の障害に加え、顔や手足などが自分の思いと関係なく動いてしまうため、自分の意思を伝えにくい方もいます。 【必要な配慮】 ・車いす利用者のために段差に携帯スロープを渡す ・高い所に陳列された商品を取って渡す ・列に並んで順番を待つことが難しいときには、列から外れて順番を待てるようにする ・脊髄損傷などにより体温調整が損なわれているときには、エアコンなどの室温調整に配慮する ・本人の意思を十分に確認しながら書類の記入やタッチパネルの操作などを代行する 資料(障害特性と必要な配慮):内部障害・難病に起因する障害 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 内部障害とは、内臓機能の障害であり、心臓機能、呼吸器機能、じん臓機能、ぼうこう・直腸機能、小腸機能、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能、肝臓機能などの機能障害があります。 内臓機能の障害は難病(発病の機構が明らかでなく、治療方法が確立していない希少な疾病であって、長期にわたり療養を必要とする疾病)などに起因することもあります。症状の変化が毎日あり、日によって変化が大きく、進行性の症状を有することが多いです。同じ疾患でも患者によって異なる症状を示す場合があります。 〇心臓機能障害 不整脈、狭心症、心筋症等のために心臓機能が低下した障害で、ペースメーカー等を使用している方もいます。 〇呼吸器機能障害 呼吸器系の病気により呼吸機能が低下した障害で、酸素ボンベを携帯したり、人工呼吸器を使用している方もいます。 〇腎臓機能障害 腎機能が低下した障害で、定期的な人工透析に通院している方もいます。 〇ぼうこう・直腸機能障害 ぼうこう疾患や腸管の通過障害で、腹壁に新たな排泄口(ストマ)を造設している方もいます。 〇小腸機能障害 小腸の機能が損なわれた障害で、食事を通じた栄養維持が困難なため、定期的に静脈から輸液の補給を受けている方もいます。 〇ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能障害 HIVによって免疫機能が低下した障害で、抗ウイルス剤を服薬しています。 〇肝臓機能障害 肝臓の機能が低下した障害で、倦怠感(だるさ)、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)、出血傾向(あざができやすい)、易感染症(感染しやすい)、吐血、意識障害などが生じやすくなる方もいます。 主な特徴 ・外見からわかりにくい 外見からは障害が分かりにくいため、電車やバスの優先席に座っても周囲の理解が得られないなど、心理的なストレスを受けやすい状況にあります。 ・疲れやすい 障害のある臓器だけでなく全身状態が低下しているため、体力がなく、疲れやすい状況にあり、重い荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担 を伴う行動が制限されます。 ・タバコの煙が苦しい方もいる 呼吸器機能障害のある方では、タバコの煙などが苦しい方がいます。 ・トイレに不自由されている方もいる ぼうこう・直腸機能障害で人工肛門や、人工ぼうこうを使用されている方(オストメイト)は、排泄物を処理できるオストメイト用のトイレが必要です。 【必要な配慮】 ・症状に波があるので、症状に応じた柔軟な対応を行うようにする ・継続的な通院や服薬が必要なときには、休暇や休憩などについて配慮する ・ペースメーカーや人工呼吸器などが必要なときには、それらの機器の使用について配慮する 資料(障害特性と必要な配慮):知的障害 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 知的機能の障害が発達期(おおむね18歳未満)にあらわれ、日常生活の中で様々な不自由が生じることを言います。例えば、複雑な事柄やこみいった文章・会話の理解が不得手であったり、おつりのやりとりのような日常生活の中での計算が苦手だったりするなど、知的な遅れと社会生活への適応のしにくさを有しています。 また、障害のあらわれ方は個人差が大きく、少し話をしただけでは知的障害の状況がわかりにくいこともあります。しかし、自分のおかれている状況や抽 象的な表現を理解することが苦手であったり、未経験の出来事や状況の急な変化への対応が困難であったりする方は多く、支援の仕方も一人ひとり異なります。 主な特徴 ・複雑な話や抽象的な概念は理解しにくいこともあります ・人にたずねたり、自分の意見を言うのが苦手な方もいます ・漢字の読み書きや計算が苦手な方もいます ・自分が納得できるまで同じ質問を繰り返す方もいます 【必要な配慮】 ・ゆっくりはっきりと話したり、コミュニケーションボードなどを用いたりして意思疎通を行う ・資料を簡潔な文章によって作成したり、文章にルビを付したりする ・実物、写真、絵などの視覚的に分かりやすいものを用いて説明する 資料(障害特性と必要な配慮):重症心身障害 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 重症心身障害とは、 ・自分で体を動かすことができない重度の肢体不自由 ・年齢に相応した知的発達が見られない重度の知的障害 の2つが重複している状態をいいます。 その状態にある子どもを重症心身障害児、さらに成人した人を含めて「重症心身障害児(者)」といいます。 主な特徴 ・ほとんど寝たままで自力では起き上がれない状態の方が多いです ・移動、食事、着替え、洗面、トイレ、入浴などが自力ではできないため、日常の様々な場面で介助者による援助が必要な方もいます ・声が出せても会話で意思を伝えることは難しいことが多いです ・口や目の動き、身振りなどを用いて意思を伝えますが、日常的に介護している人でないと読み取りづらいこともあります 資料(障害特性と必要な配慮):精神障害 障害者施策推進本部(事務局:内閣府)発行『公共サービス窓口における配慮マニュアル』(平成17年(2005年))、内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 精神障害のある方は、統合失調症、うつ病、双極性障害(躁うつ病)、てんかん、アルコール依存症、認知症、摂食障害等のさまざまな精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えています。適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば症状をコントロールできるため、大半の方は地域で安定した生活を送られています。 統合失調症は、幻覚・思考障害、感情や意欲の障害など、多様な精神症状を特徴とし、現実を認識する能力が妨げられ、正しい判断ができにくく、対人関係が難しくなるなど、さまざまな生活障害を引き起こします。おおよそ100人に1人がかかる大変身近なものといわれています。 うつ病は、気分がひどく落ち込んだり、何事にも興味を持てなくなったりして、日常生活に支障が現れます。国内の調査によると、うつ病を経験している人は約15人に1人とされています。 双極性障害(躁うつ病)は、うつ状態では死にたくなるなど、症状によって生命の危機をもたらす一方、うつと正反対の躁状態を放置すると、人間関係、社会的信用、仕事や家庭などが損なわれる重篤な疾患です。 てんかんは、通常は規則正しいリズムで活動している大脳の神経細胞(ニューロン)の活動が突然崩れて、激しい電気的な乱れが生じることによって発作が現れる病気です。 アルコール依存症は、長年にわたって大量のお酒を飲み続けるうち、飲酒のコントロールが自分でできなくなり、身体をこわしたり、職場や家庭でのトラブルが引き金となって人間関係をこわすことがある病気です。 認知症は、いったん獲得された認知機能(記憶、言語、学習、判断力等)が持続的に低下し、さっきのことが思い出せない、今までできたことができない、暴言・暴力、徘徊、妄想等が生じる等により生活に支障を生じた状態をいいます。 主な特徴 ・ストレスに弱く、疲れやすく、対人関係やコミュニケーションが苦手な方が多いです ・外見からは分かりにくく、障害について理解されずに孤立している方もいます ・精神障害に対する社会の無理解から、病気のことを他人に知られたくないと思っている方も多いです ・周囲の言動を被害的に受け止め、恐怖感をもってしまう方もいます ・学生時代に発病したことや、入院が長くなったことなどで、社会生活に慣れていない方もいます ・気が動転して声の大きさの調整が適切にできない場合もあります ・認知面の障害のために、何度も同じ質問を繰り返したり、つじつまの合わないことを一方的に話す方もいます 【必要な配慮】 ・細かく決まった時間や多人数の集団で行動することが難しいときには、時間やルールなどの柔軟な運用を行うようにする ・曖昧な情報や一度に複数の情報を伝えると対応できないときには、具体的な内容や優先順位を示すようにする ・情緒不安定になりそうなときには、別室などの落ち着ける場所で休めるようにする 資料(障害特性と必要な配慮):発達障害 内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年))、大阪府発行『ほんま、おおきに!!〜ひろげようこころの輪〜障がい理解ハンドブック』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 発達障害者支援法では、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において 発現するもの」と定義し、支援の対象としています。発達障害には、知的障害を伴う場合と伴わない場合とがあります。なお、平成30年6月に世界保健機構(WHO)から国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が公表されました。現在、診断名も含め、その適用に向けたさまざまな検討がすすめられている段階のため、本要領では主に発達障害者支援法で定義されている名称を用います。                                  自閉症・アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害(自閉スペクトラム症) 相手の気持ちを理解したり、相手の立場に立って物事を考えたりすることが苦手など、対人関係やコミュニケーションの難しさが主な特徴です。また、同じ行動を繰り返したり、興味のあるものにこだわったり、変化に対応することの苦手さなどが見られます。 学習障害(LD) 全体的な知的発達に遅れはありませんが、読み書きや計算など、特定のことに困難があります。学習や仕事の場面で、書くことや文章を読むこと、計算などの極端な苦手さが見られます。 注意欠陥多動性障害(ADHD) 注意力と集中力に欠けること、多動性(じっとしていられない)や衝動性(考えずに行動してしまう)といった特徴があります。気が散りやすく一つのことに集中して取り組むことが難しかったり、ケアレスミスや失くし物が多い、整理整頓が難しいといった苦手さが見られます。 主な特徴 ・外見から分かりにくいです ・相手の言っていることを、そのまま繰り返す可能性があります ・遠回しの言い方や曖昧な表現だと理解が難しい方もいます ・相手の表情・態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手な方もいます ・想定外のことが起きた際に自分で立て直すことが苦手な方もいます ・一般的な社会的コミュニケーションスキルが十分ではない方もいます ・関心あることばかり一方的に話す方もいます ・知的発達に遅れがないものの、流暢に音読することができない方もいます 【必要な配慮】 ・書籍やノートなどを用いた読み書きに困難があるときには、タブレットなどの補助具を用いることができるようにする ・感覚過敏があるときには、それを和らげるための対処(例えば聴覚過敏に耳栓使用)を行えるようにする ・作業手順や道具配置などにこだわりがあるときには、一定のものを決めておくようにする ・あいまいな表現を避け、何をどうしてほしいかなど、伝えたい内容を具体的に説明する ・一度にたくさんの指示があると、すべてを理解することが難しかったり、優先順位をつけるのが難しくなったりする場合があるため、ひとつひとつ順を追って伝えたり、内容をメモに書いて渡すなどの配慮があると、理解しやすくなる ・苦手なことに注目するだけではなく、その人の強味や興味関心を活かすことも考えながら、その人に合った方法を相談して決めていくようにする 資料(障害特性と必要な配慮):高次脳機能障害 大阪府発行『ほんま、おおきに!!〜ひろげようこころの輪〜障がい理解ハンドブック』(令和6年(2024年))より抜粋 障害特性 けがや病気により脳に損傷を受けたことが原因で生じる認知面の障害のことをいいます。新しい情報を覚えたり、物や人に集中したり、物事を計画的にすすめたり、感情をコントロールし、相手の気持ちを理解することなどが難しくなるといった症状があります。 外見からはわかりにくい障害であるため、周囲の人が理解しにくく、本人の性格であると誤解されることも多いです。   主な特徴 ・約束や予定を忘れたり、何度も同じことを聞いたりしてしまいます ・気が散りやすく、集中力を持続させることが苦手です。同じミスを繰り返してしまうことがあります ・考える前に行動してしまったり、言われないと行動できなかったりします ・感情や行動を自分でコントロールするのが難しくなります 【必要な配慮】 ・大事なことは「ゆっくり、わかりやすく、具体的に」伝え、一つずつお願いしたり、忘れないようにメモにして渡したり、工夫をする ・職場では、本人の状態に合わせて仕事の内容や量を調整し、また、「日課をシンプルにする」など、行動を習慣化することでできることも増えるため、周 囲の人の支援により環境調整などをすることが大切である 参考リンク                      〇関連条文 ・障害者権利条約 (外務省ホームページ)https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html ・障害者基本法(昭和45年法律第84号) (内閣府ホームページ)https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/wakugumi.html ・障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号) (内閣府ホームページ)https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html 〇障害を理由とする差別の解消の推進に関する豊中市職員対応要領の引用文献 ・内閣府発行『障害を理由とする差別の解消の推進 国・地方公共団体における相談窓口担当者向け相談対応マニュアル』(令和6年(2024年)) (内閣府ホームページ)https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/jirei/soudan-manual.html ・厚生労働省『障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン』(令和6年(2024年)) (厚生労働省ホームページ)https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html ・障害者施策推進本部(事務局:内閣府)発行『公共サービス窓口における配慮マニュアル』(平成17年(2005年)) (内閣府ホームページ)https://www8.cao.go.jp/shougai/manual.html ・大阪府発行『ほんま、おおきに!!〜ひろげようこころの輪〜障がい理解ハンドブック』(令和6年(2024年)) (大阪府ホームぺージ)https://www.pref.osaka.lg.jp/o090050/keikakusuishin/syougai-plan/sabekai-kaisai.html 〇障害者差別解消法の概要や障害特性ごとの「合理的配慮の提供」に関する事例等の情報 ・障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト(内閣府ポータルサイト)https://shougaisha-sabetukaishou.go.jp/