豆知識【耳鼻いんこう科】:おたふくかぜ ムンプス難聴とは
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更新日:2025年1月15日
ムンプス難聴という病気をご存じでしょうか。ムンプスとはおたふくかぜのことです。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)はムンプスウイルスに感染することにより起こる病気です。おたふくかぜにかかるのは主にウイルスに対する免疫を持っていない子供で、発症すると発熱し、耳の下にある耳下腺という唾液腺が腫脹し疼痛を伴います。ほとんどが10日程度で後遺症無く自然治癒するため、軽い病気と考えられがちですが、10~20人に1人の割合で無菌性髄膜炎など重篤な合併症を引き起こすためワクチンによる予防が必要です。
ムンプス難聴は、その重篤な合併症の一つで、発症すると片耳の聴力が失われます。現在もまだ有効な治療法はありません。おたふくかぜにかかった数百人に一人が発症すると考えられており、日本では年間数百人の子供が、おたふくかぜが原因で片耳の聴力を失っていると推定されています。
ムンプス難聴にならないためにはおたふくかぜワクチン接種が必要です。残念ながら日本ではおたふくかぜワクチンは任意接種(希望者のみ、有料)であり接種率は約30%しかありません。ワクチンの安全性や有効性は確立されており、欧州、南北アメリカ大陸各国では100%、全世界でも約60%の国で接種が義務づけられています。
おたふくかぜワクチンは、1才になったら1回目、その2~4年後に2回目の接種が推奨されています。アメリカでは年間15万人以上の患者が発生していましたが、1989年2回接種が義務化され2003年には231人まで患者数が減りました。ただ2006年に大学生を中心に6,534人の患者が発生したため、州によっては3回接種を検討しているとのことです。ちなみに日本では2005年に大流行がありましたが、その年の推定患者数は135.6万人でした(患者が少なかった2007年でも推定43.1万人)。
日本でも以前はおたふくかぜワクチンの定期接種(必須、無料)が行われていたのですが、ワクチンによる副反応である無菌性髄膜炎が問題になり(発症率0.16%)、任意接種に切り替えられました。そのため接種率が低下し、現在に至るまで周期的な大流行が繰り返されているのです。しかし現在のワクチンは副反応の少ない安全なワクチン(発症率0.01~0.10%)になっており、また無菌性髄膜炎を発症しても自然感染による合併症に比べ重症にはなりません。
みなさんのまわりにまだワクチンを受けておられないお子さん、これから受ける赤ちゃんがおられましたら、ワクチンの大事さをお伝え頂ければと思います。
ムンプス難聴に治療法はありませんが、予防はできます。
(参考:KNOW★VPD!VPDを知って子供を守ろう。(外部サイト))
