豆知識【消化器内科(肝胆膵)】:奈良宣言と脂肪肝
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更新日:2025年1月29日
令和5年(2023年)6月日本肝臓学会より「奈良宣言2023」が発出されたのをご存じでしょうか。
肝臓は沈黙の臓器といわれ、早期発見が難しいことから、健康診断で一般に測定されているALTが30を超えていた場合に、まずはかかりつけ医を受診し、必要があれば専門医を紹介することで、慢性肝臓病(CLD)の早期発見・早期治療をめざしたものです。
肝臓病の中で頻度が高かったウイルス性肝疾患(特にB型肝炎やC型肝炎)は治療薬の進歩により減少する一方、生活習慣を基盤とした肥満やアルコールによる肝臓病が増えてきております。日本では検診受診者の約3割が脂肪肝という話もあり、2000万人を超えると推定されています。脂肪肝は肝臓に脂肪が異常に蓄積した状態で、脂肪肝の3大原因は肥満、お酒の飲み過ぎ、糖尿病です。飲酒量の多寡により非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)とアルコール関連脂肪肝に大別され、NAFLDの多くはメタボリックシンドロームを合併し、糖尿病や脂質異常、高血圧などを誘発して動脈硬化を進展させたりします。NAFLDのうち約10~20%は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といい、放っておくと慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行してしまう可能性があります。近年、Fatty(脂肪過多)やAlcoholic(アルコール依存)という表現が不適切であるとのことから、現在は代謝異常に焦点を当て、NAFLDをMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患、マッスルディー)に、NASH はMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎、マッシュ)へと名称が変更されています。
脂肪肝の治療は、まずは生活習慣の改善で、食事療法・禁酒が基本となりますが、MASHで肥満の方は-7kgの減量を目標とします。食事療法では糖質や脂質を制限し低カロリーにより肥満の改善を目的としますが、極端な食事制限は筋肉量が減少し、その結果基礎代謝が落ちてしまいます。さらに運動療法を併用し、散歩やジョギングなどの有酸素運動が行うことが効果的です。
