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胃・食道外科グループにおける治療の取組みについて

ページ番号:277526662

更新日:2021年10月6日

低侵襲手術

低侵襲手術とは

一般的に胃がんに対する手術は、みぞおちから(へそ)のあたりまでの皮膚を切開する開腹手術が行われますが、傷が大きく患者さまの負担が大きいといった問題がありました。それに対して近年、5ミリメートル~3センチメートル程度の小さな傷で手術を行う低侵襲手術(ロボット支援手術や腹腔鏡手術)が普及してきました。低侵襲手術は傷が小さいため、整容性に優れるとともに術後の痛みが少なく、手術からの回復も早いといったメリットがあります。しかし、その適応は早期胃がんや一部の術式、全身状態の良好な患者さまに対してのみに限られていました。当院では、低侵襲手術も開腹手術と同等の安定した成績を収めていることから、ほとんどの症例に対して行っており、その割合は最近では95%以上になります。

画像は、術式の推移を表したグラフです。2010年以降の、開腹、腹腔鏡、ロボット支援による術式の割合をグラフで表しています。開腹手術は徐々に減少し、腹腔鏡手術は年々増えています。またロボット支援手術も2019年から導入し、2020年からは低侵襲手術である腹腔鏡やロボット支援手術の割合は、全体の95パーセント以上を占めています。

開腹手術と低侵襲手術の傷のイメージ

写真は、開腹手術と低侵襲手術がそれぞれ体にできる傷の大きさと位置を示しています。開腹手術は上腹部に大きな傷ができます。低侵襲手術ではへそとその上部に数か所小さな傷で手術を行うことができます。

腹腔鏡手術

先に述べた通り、腹腔鏡手術のメリットとして、患者さまの負担が少なく整容性に優れますが、一方で開腹手術に比べ、手術器具の扱いなどに関して高度の技術が必要とされます。当院では、腹腔鏡手術に習熟した医師(内視鏡外科技術認定医*)によって安全に手術を行っています。

* 日本内視鏡外科学会による認定制度で、内視鏡下手術を安全かつ適切に施行する技術を有し、かつ指導するに足る技量を有している。

画像は、腹腔鏡手術の様子と腹腔鏡を挿入するポートの位置を示すイラストです。この図説では胃の手術にあたり、腹部の数ヶ所から内視鏡を挿入し、モニターで内視鏡からの映像を見ながら手術を進めています。

ロボット支援手術

2018年から胃がんに対して、ロボット支援手術が保険適応となりました。ロボット支援手術は、腹腔鏡手術と同様に小さな傷で手術を行いますが、ロボットに接続された手術器具(鉗子や内視鏡)を外科医が操作することで、腹腔鏡手術と比べてさらに精細な操作が可能で、手術合併症が少なくなると期待されています。しかしロボット支援手術は、内視鏡外科技術認定医*に加えて、ロボット支援手術を行う認証を取得する必要があります。当院ではそれらの有資格者によって安全に手術を行っています。

写真は、ロボット支援手術に使用される3種類の機器です。ロボットアームが付いており、実際に患者さまに接して手術を行うためのペイシェントカートと、それを操作するためのサージョンコンソール、そして内視鏡からの映像を確認するためのビジョンカートを用いて手術を行います。

胸腔鏡手術(食道がん手術)

従来、食道がんに対する手術は、首、胸、お腹の3つの領域にわたって切開が必要で、特に胸とお腹を大きく開ける手術が標準的に行われてきました。当院では、食道がんに対しても5ミリメートルから1センチメートル程度の小さな傷で行う低侵襲手術を導入しており、胸の操作に対しては胸腔鏡、お腹の操作に対しては腹腔鏡を行うことで、負担が少なく、整容性に優れた術式を行っています。

画像は、開胸+開腹手術の場合の傷の大きさや位置と、胸腔鏡手術+腹腔鏡手術の場合の傷の大きさや位置を表したイラストです。前者に比べて後者のほうが傷が大きくはなく、低侵襲に手術を行うことができます。

機能温存手術

胃温存手術

胃がんの手術後は、胃がなくなったり小さくなることで、思うように食事がとりにくかったり、食事の消化吸収能力が低下します。特に胃全摘術では、手術の影響が大きく一般的に術後1年間で体重が15%以上減少し、手術後の生活の質が大きく損なわれると考えられています。
胃の上部にできた進行胃がんに対しては、胃全摘が行われること一般的ですが、当院では、根治性を損なうことなく、少しでも胃を残すべく、胃の上の部分(亜全摘術)または、胃の出口側を残す(噴門側胃切除術)ように心がけています。胃を少しでも残すことで、術後の栄養状態や生活の質が悪化することを予防するとともに、術後補助化学療法をしっかり続けられ、再発しにくい環境を整えます。

(例) 胃の上部にできた進行胃がんに対する胃温存手術

画像は、胃の上部にできた胃がんに対する各術式の胃切除具合を表したイラストです。胃全摘術では胃を全て取り除きますが、機能温存手術である胃亜全摘術では胃の上の部分を残し、噴門側胃切除術では胃の出口側を残します。

術式別の体重減少のイメージ

画像は、術式別の体重減少のイメージを表す曲線のグラフです。時間が経過するにしたがって体重がどのように減少していくのかを視覚的に表しています。胃全摘術は術後早期に大きく体重が減少し、そこからも徐々に減少していきます。幽門側胃切除術(胃亜全摘術)は早期の体重減少が比較的少なく、そこから徐々に減少しますが胃全摘術ほど減少しません。噴門側胃切除術は幽門側胃切除術と胃全摘術の中間くらいの体重減少です。したがって、機能温存手術で体重減少を抑制できていることがわかります。

当院における胃温存手術の割合

画像は、当院における胃温存手術の割合を表すグラフです。2015年以降の胃全摘、噴門側切除、幽門側切除、その他による術式の割合をグラフで表しています。胃全摘術が年々減少し、胃を温存する術式(幽門側胃切除、噴門側胃切除)の割合が多くなってきています。

上川(観音開き)再建法

噴門側胃切除術術後は、胃の入り口にある噴門弁と一緒に胃を切除するため、術後に容易に胃の内容物が食道や口側に逆流し、胸やけなどの逆流症状が起きやすくなりあます。そこで当院では、上川再建術(観音開き法ともいいます)といって、胃と食道を吻合する際に噴門を再構築する上川再建術を行っています。噴門側胃切除術後の再建方法はさまざまですが、上川再建術がもっとも逆流防止機能が強いとされています。当院は上川再建術を腹腔鏡やロボット手術で行うことで、機能温存と低侵襲性を両立するようにしています。


画像:噴門側胃切除術+上川再建術(観音開き法)再建術の術式を表したイラスト

食道と胃を吻合するときに、胃の壁の中に食道を潜り込ませるように吻合することで、噴門を再構築します。手術の難易度は通常の吻合法より難しくなりますが、術後の逆流がしにくく、患者さまの生活の質の維持に有用と考えています。

通常の食道胃吻合術後

写真は、通常の食道胃吻合術後の内視鏡で撮影した胃の内部です。
噴門が失われるため、胃内容物が食道に逆流(逆流性食道炎)しやすくなる

上川再建術(観音開き法)

写真は、上川再建術(観音開き法)後の内視鏡で撮影した胃の内部です。
食道胃吻合の際に噴門を再構築するため、胃から食道に逆流しにくくなる

コンバージョン手術

コンバージョン手術

治療を開始する時点で、高度なリンパ節転移、腹膜播種、肝転移等の遠隔転移がある場合(4期)は、手術で完全に切除することが困難であり、抗がん剤治療(化学療法)を行うことが推奨されています。しかし、抗がん剤がよく効いた場合、手術(コンバージョン手術)を併用することで、抗がん剤のみの治療より治療精機が向上することが期待されます*。
一般的に、高度なリンパ節転移、腹膜播種、肝転移等の遠隔転移がある胃がんに対しては、2種類の抗がん剤を組み合わせて行いますが、当院では、コンバージョン手術ができる可能性があると判断された患者さまに対しては、より強力な3種類を併用して行うDOS療法(ドセタキセル、オキサリプラチン、S-1併用化学療法)などを積極的に行っています。

* 高度なリンパ節転移、腹膜播種、肝転移等の遠隔転移がある胃がんに対するコンバージョン手術については、化学的根拠はまだまだ十分ではなく、その適応については今後も十分に検証が必要です。

審査腹腔鏡検査・腸瘻造設術

胃がんの治療前にさまざまな検査を行い、胃がんの進行度を評価したうえで治療を開始しますが、より正確にお腹の中の状態を確認する必要があると判断された場合は、5ミリメートから1センチメートル程度の孔を3つほど開けて行う審査腹腔鏡検査を行う場合があります。
また胃がんによって食事の通過障害がある場合は、審査腹腔鏡検査の際に直接腸に栄養剤を注入できるよう腸瘻を作る場合があります。腸瘻によって抗がん剤治療中も栄養状態を悪化させることなく、しっかりと治療を継続することが期待されます。

化学療法

胃がんに対する術前補助化学療法

手術で切除できると判断される胃がんに対しては、手術を行うことが一般的ですが、当院では、進行胃がんに対して、術前に化学療法(術前補助化学療法)を行った後に手術を行うことがあります。術前補助化学療法によって、治療成績の向上を目的として行いますが、患者さまの状態に合わせて、2種類の抗がん剤を組み合わせて行う場合や、より強力な3種類を併用して行うDOS療法(ドセタキセル、オキサリプラチン、S-1併用化学療法)などを行う場合があります。他にも、臨床試験や治験などを含めてさまざまな治療の選択肢を患者さまにご紹介できるようにしています。

胃がんに対する術後補助化学療法

胃がん手術後に再発すると、残念ながら治癒が困難となります。したがって、進行胃がんに対しては、術後再発予防の抗がん剤治療(術後補助化学療法)がとても重要になります。2期の胃がんの術後は、S-1という飲み薬を外来通院しながら1年間継続します。術後補助化学療法を行うことで、死亡のリスクが33%下がることが報告されています。

画像は、胃がん手術後に抗がん剤を服用した患者と抗がん剤を服用しなかった患者の5年後の生存率の違いを表すグラフと、それらの症例数を記した表です。グラフでは、抗がん剤を服用したTS-1投与群が、抗がん剤を服用しなかった手術単独群の生存率を比較できます。TS-1投与群の5年生存率は71.7%ですが、手術単独群だと症例数530例で5年生存率は61.1%と、術後に抗がん剤を内服することで再発やがんによる死亡を抑えることができます。

3期の胃がんに対しては、治療の前半の6か月間、S-1に点滴の抗がん剤(ドセタキセル)を加えて治療を行う(DS療法)ことがあります。DS療法の方がS-1服用のみの場合より、副作用が強まりますが、再発を予防する効果が高いことが判っています。

術後補助化学療法は、1年間しっかりと継続することで再発予防の効果が高まりますが、副作用による患者さまに負担がかかることがあります。当院では、医師、薬剤師、看護師、栄養士が連携し、副作用に配慮し、患者さまをサポートしています。具体的には、薬剤師は、副作用に関する指導を行い、相談窓口となり、看護師は、療養環境を整備するお手伝いをし、栄養士は、お食事が思うように召し上がれない際に、具体的なお食事内容をご提案します。これらの取り組みによって当院では、S-1の服用を1年間継続できた患者さまの割合が、過去に行われた臨床試験と比較して高くなっています。

画像は、手術後に補助療法としてS-1が継続できた割合を表す棒グラフです。2001年に開始された国内の大規模の臨床試験と、2013年に開始された臨床試験と、2020年の市立豊中病院での3か月、6か月、9か月、12か月で比較しています。12か月では臨床試験での継続の割合は65.8%、56%と低くなっていますが、当院では84.2%と高い継続率となっています。

食道がんに対する術前化学療法

手術で切除が可能な進行食道がんに対する治療は、2種類の抗がん剤を組み合わせる術前補助化学療法(FP療法:5-FU、シスプラチン併用化学療法)後に手術を行うことが一般的です。しかし、当院ではより強力な3種類を併用して行うDCF療法(ドセタキセル、シスプラチン、5FU併用化学療法)などを行う場合があります。DCF療法の副作用はFP療法よりも強まりますが、FP療法よりも腫瘍を縮小させる効果が高く、生存期間が延びることをめざしています。適切な副作用対策で、安全に治療を行うことを心がけています。

がんゲノム医療

がんゲノム医療は、遺伝子情報に基づくがんの個別化治療の1つです。当院は、がんゲノム医療連携病院に指定されていますので、がんゲノム医療を行うことができます。胃がんの場合、胃がんの再発に対して、薬の治療(抗がん剤など)を行った後に、がんゲノム医療が選択肢となります。具体的には、胃がんに対して保険承認が得られている薬をすべて使っても、再発病変があり、治療を受ける充分な体力がある患者さまに、がん遺伝子パネル検査が適応となります。がん遺伝子パネル検査では、主に患者さまのがん組織を用いて多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにします。検査の結果、胃がんには保険承認が得られていないものの、がん組織の遺伝子変化に対応し、がんが縮小する可能性のある薬が判明した場合、その薬を用いて治療を行うことが治療の選択肢となります。

運動・栄養療法

運動療法

特に最近は、食道・胃がん患者さまの高齢化や、さまざまな併存疾患を持つ患者さまの割合が増加しています。そのような患者さまは、サルコペニア(全身の筋肉量減少)状態であることが多く、手術合併症のリスクが高く、手術後の回復が遅くなることが知られています。また、術後は手術の影響でさらに筋肉量が低下するため、日常生活の質(日常生活動作、ADL)も悪化します。
当科では、必要に応じて体成分分析装置(InBody)を用いて、サルコペニアの有無を評価するとともに、術前から抗重力運動を中心としたリハビリを行っています。また、手術直後からアミノ酸やたんぱく質を多く含有されている食事や点滴メニューを摂っていただくことで、筋肉量減少を予防しています。それらによって、手術を安全に受けていただくとともに、術後も術前と変わらない生活を維持できるように取り組んでいます。


写真:体成分分析装置(InBody)を用いて体組成を計測している様子

栄養療法

食道・胃がんの患者さまは、がんによる体重減少や、栄養状態が悪化していることが多く、さらに術後は、手術にともなうさまざまなお腹の症状によって、『食べたくてもたくさん食べることができない』『食べても体重が増えない』といったことがよくあります。手術前後の体重減少は、単なる体重減少にとどまらず、手術合併症のリスクの増加や、免疫力悪化による術後再発のリスクが高くなることが知られています。
当科では管理栄養士によって、手術前、入院中、手術後と細かく食事指導を行い、手術後の食事の摂り方や、食事形態の選び方などを学んでいただいています。また、必要に応じて、手術前後から成分栄養剤、半消化態栄養剤などの球種効率のよい栄養剤を摂取していただくことで、手術の安全性の向上と再発のリスクを低下するように取り組んでいます。


写真:さまざまな栄養剤

臨床試験や治験

当院では現在の標準治療より、よりよい新しい治療法を確立していくべく、さまざまな臨床試験グループに所属しています。それによって、一般的に行われていない試験治療や治験などを患者さまにご紹介し、さまざまな治療選択肢をご紹介できるようにしています。治験や臨床試験は、新たに始まったり、終了したりしますので、詳細は担当医にお尋ねください。

当院の所属する臨床試験グループ

  • 日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
  • 大阪消化管がん化学療法研究会(OGSG)
  • 大阪大学上部疾患分科会
  • 腹腔内化学療法研究会
  • 日本がん臨床試験推進機構(JACCRO)
  • 西日本がん研究機構(WJOG)
  • 九州消化器癌化学療法研究会(KSCC)
  • 東京がん化学療法研究会(TCOG)
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