豊中不動尊からこどもと若者に届ける能の世界
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更新日:2026年1月6日

「能をメジャーにしたい。」
豊中市内で能面師として活躍されている鳥畑英之さんにお話を伺いました。
鳥畑さんは、能面師として全国的に活躍されるかたわら、豊中市北部の島熊山豊中不動尊の能舞台において地域に向けた能イベントを開催されています。
今回は鳥畑さんの取組みや、能にかける思いをご紹介します。
目次
大阪・関西万博ならではの特別展示
能面のひみつ
能舞台を文化発信拠点に!
若者に“能”を届けたい
伝統芸能のこれから
大阪・関西万博ならではの特別展示
―関西万博で能面の展示をされたと聞きました。今回の展示では、どのようなことを来場者に伝えたいと考えていましたか。
日本の古典芸能である能に触れ、幽玄の世界を味わっていただきたいと考えていました。
200種類を超える能面がありますが、大阪・関西万博で開催した「万博能面祭」では現在開催されている能公演のほとんどの演目(謡曲)に使用できる能面を
全国から集め、85面を展示しました。現在、国内で開催される能面展でこれほどの種類の能面が一堂に会して見られることはありません。
万博ならではの展示になったと思っています。
―万博の展示も盛況だったと聞いています。どのような方が参加されていましたか。
従来の普及活動では高齢者が多く参加されていましたが、今回の展示では、年代を問わず来場いただきました。
海外からの来場者や学生など多くの方々に、日本の古典芸能である「能」に触れてもらえる機会となりました。
能面のひみつ

写真は、鳥畑さんの能面の一部です。
現在の能面の材料のほとんどは、ヒノキで制作されています。
面の彫刻が終わった後、彩色を行います。
彩色には下地に胡粉溶液(胡粉+膠溶液)を塗り、顔料で色付けを行います。
老人面や翁面には髪の毛・髭・眉などに馬やウサギの毛が使われています。

作りかけの面に型紙をあてている様子
―能面はどのように作成されていますか。
古面(鎌倉時代~江戸時代初期の有名な能面)の写し(レプリカ)を主に制作しています。
その古面を写した師匠の本面を採寸して型紙を作り、型紙に又本面に合うように彫刻します。
型紙のあるところは彫刻出来ますが、型紙の無いところ例えば型紙と型紙の間などは、
その本面の表情・感情など読み取り彫刻します。
又、形だけでなく本面の表情・感情迄写し取るために作者の技量や感性が求められます。
―面裏にはどのような工夫をされていますか。
面裏は唯一演者の顔に触れるところです。人の顔に合う形で彫刻します。
能面は8mm程度の目の孔と鼻の孔しか外を見ることができる箇所がないため、
いかによく見えるかの工夫が必要です。
また、演能の間、長時間面を着けるため、軽くなければいけません。
写し面で唯一作者本人を表現できる場所が裏彫で、その作者特有のノミ跡、又は隠し彫が出来ます。
能舞台を文化発信拠点に!

体験教室では能面をつけることができる
―現在、豊中不動尊ではどのような活動をされているのでしょうか。
能楽だけではなく、こども向けに能を知ってもらう体験教室やイベントを行っています。
豊中不動尊に能舞台があることを知らない方も多くいるので、そういった方々にも古典芸能を知っていただきたく活動しています。
また、能舞台においてオペラ歌手の方やジャワ舞踏家の方をお呼びして能とのコラボレーションを楽しむ会や、落語会も開催しています。
―特にどのような方に能を知ってほしいですか。
若者にもっと能の魅力を届けたいと思っています。
古典芸能を未来につなげるためには、若者にその魅力を知ってもらうことが欠かせません。
だからこそ、いろんな世代へ向けて能に親しみを持ってもらえるようなイベントを行っています。
若者に“能”を届けたい

笑顔でイベントの内容を 説明してくれる鳥畑さん
―若者からの反応はいかがですか。
参加者のみなさんは、イベントの場で興味を持って熱心に学んでくださっています。
ただ、能特有の所作の意味や舞台上の状況、古語の表現など、初めての方には分かりづらい部分が多い
のも事実です。「1回鑑賞してみたけれど、結局どんな物語だったのか理解するのが難しかった」
という声も少なくありません。
丁寧な解説や、場面を読み解くためのガイドがあれば、もっと能の理解も深まるのかもしれませんね。
―若者への普及のために、どのような工夫をされているのでしょうか。
最近の能の世界では、古典作品だけでなく、アニメやマンガを題材にした新しい能にも挑戦しています。
現代の人気作品を取り入れることで、初めて観る方でも舞台に入りやすくなると考えられたからです。
実際に「能狂言『鬼滅の刃』」は、多くの若者の関心を集めました。新作の制作には、舞台使用の交渉や制作面での負担も大きく、現場としては苦労もありますが、これは大切な挑戦です。
―感じている課題はありますか。
担い手不足です。
これまでは家業として自然に受け継がれてきましたが、生活環境の変化により継承が難しい時代になっています。
文化として続けていくには、社会全体での理解と支援が欠かせません。
多様性が求められる今だからこそ、自国の歴史や文化を忘れず、大切にしながら未来へつなげていくことが求められていると強く感じています。
伝統芸能のこれから

「能狂言『鬼滅の刃』」には鳥畑さんの作った面が使われている
―若者に興味を持ってもらえるように能を変えようと思うことはありますか。
先ほども述べましたが、やはり能をメジャーにしていくために若者への裾野を広げていくことは重要だと思っています。
能で表現される内容は、平家物語、源氏物語などから抜き出した一節による男女の悲哀・嫉妬などの物語が多く見られます。原文では数秒で語り終えるような十行ほどの短い話を、能では一時間ほどかけて演じます。舞台には背景がなく、演者はパントマイムのように所作で情景や心情を表します。
昔の人々は想像力に優れていたため、このような表現を楽しめましたが、昭和以降テレビが普及したことで、能の理解は難しくなったのではないかと思います。
そのような中、現代の若者にも興味をもってもらえる「能狂言『鬼滅の刃』」などの新作能のような若者にも理解できる演目にチャレンジしています。
―新しい能にチャレンジしているのですね。でも、長い歴史だからこそ変えたくないという気持ちはありますか。
約600年以上続いてきた能が失われてしまうのは、やはり寂しいことです。今、興味を持ってくれている世代がいなくなれば、いつか能は消えてしまうのではないかという不安もあります。
しかし、現代の若者が能に親しめるようにするためには、入り口を新しくする工夫も必要だと思います。
ただし、能の基礎や本質はしっかりと残してほしいです。
能で使われている楽器(笛又小鼓・大鼓・太鼓の蒔絵が施された胴など)も約600年近く前から使われ続けてきた古いものがあり、
昔の人(織田信長・豊臣秀吉など)が聞いていた音を、そのまま現代でも聴けるということはとてもロマンがあることです。
能に限った話ではないですが、これまで続いてきた能の奥側・裏側を見て知っていくと、そこに面白さを感じてもらえると思います。

豊中不動尊内の能舞台 厳かな雰囲気で気持ちが引き締まる
編集後記
今回、鳥畑さんの取材を通じて、能に対する愛情や能面への深い思いを感じることができました。
ご厚意で能面を着けて能舞台に上がる貴重な体験もさせていただき、実際に能面を着けることで、その魅力をより深く理解できたと感じています。
また、「能をメジャーに」という思いのもと、伝統を守りながら時代に合った新作能を公演するなど、固定概念にとらわれないチャレンジ精神に感銘を受けました。
豊中市政も令和8年に90周年を迎えますが、社会情勢や世相が大きく変わる中で、これまで通りの取組みを踏襲するだけでなく、時代に合った施策に
チャレンジしていかなければ、魅力ある市でありつづけることはできないと強く感じました。
その一方で、市として大切にすべき伝統や歴史を捨て去ってしまっては、市民の皆様から愛される市ではなくなってしまいます。
職員として何を大切にし、何を変革していくかを常に考え続けていきたいと思います。
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