第九回 市長が聴く「豊中こども財団理事長 北川定行さんに聴く」
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更新日:2022年8月12日
実施日
令和4年(2022年)7月11日(月曜)
概要
豊中市では、50年以上にわたり、私立幼稚園、公立幼稚園、保育所が手を取り合い、連携を進めてきました。また、現在は生まれる前からの子育て支援と経済負担の軽減に取り組んでいます。
今回は、豊中市が選ばれるまちとして必要なことや、子どもたちの未来のためにできることについて、長内繁樹市長が豊中こども財団の北川定行理事長と対談しました。
対談要旨
子どもたちに必要なこと
長内市長(以下、市長)
豊中市では、豊中の未来を担う子どもたちが、夢や希望をもち、元気に学び、成長できる環境づくりを進めています。
「子どもたちにとって、いま必要なこと」はなんでしょうか。
北川理事長(以下、理事長)
子どもにとって一番足りないものは、自己肯定感です。
自己肯定感(※) が育っていないから人の意見を聞くことができなかったり、自分の意見をしっかり言えないことが多いです。
幼稚園、こども園、学校へ行っても自己肯定感はなかなか育たない。その部分をしっかりと進めていくべきだと思います。
「自己肯定感日本一 豊中」と言えるよう、子どもを育んでいくことが大事だと思います。
(※)自己肯定感とは、自分の価値や存在意識を肯定できる感覚のこと。
市長
子どもにとっては、できていないよと言われるより、ここまでできたねと言われる方が、モチベーションは高いと思います。
理事長
子どもには、できたことについて評価をしてあげることが重要です。
小学生の時、リコーダーを吹きながら帰っていると、近所の大人が「上手いな」と言ってくれました。
このように、子どもを地域みんなで認めて褒めてあげるような形を作れないかと思っています。
そうすることで、自分は地域の人に認めてもらえていると実感してもらい、少しずつ自己肯定感が高まっていくとよいと思いますね。
市長
言葉をかけられた子どもは、自分も誰かにそうしようと行動に移ると思います。
今の子どもたちは、これができない、あれができない、だからもっと練習して、もっと塾へ行って、頑張ってと言われます。
私が子どもだった頃に比べると、やるべきことのハードルが上がっており、子どもたちにとってもしんどいと思います。
理事長
子どもたちが努力していることを、周りの大人がしっかりと認めてあげることが大事です。
市長
本当に大切なことですね。
今年は、戦争など日常とは違う画像や映像が連日メディアに掲載されていて、子どもたちへの影響が心配です。
理事長
子どもたちの普段の生活を見ていても、主だった影響は見受けられませんが、「どうして争いがあるの」という話題は出ていると思います。
国は教育要領、保育指針を変えて「対話による保育」と言っています。
子どもたちは幼児期からしっかりと対話することが大切です。
例えば、幼児期のケンカでは、先生が、どちらが悪いのかと話を聞く裁判官役になることが多いです。
しかし、そうではなく、先生は聞き手となり、子どもたちに思い切り意見を言わせて、そこから2人がどこまで歩み寄るかを経験させることも必要です。
暴力はいけないことですが、幼児期の小さな口ケンカや論争、つまり対話する経験が、大きな争いをしないために必要だと思います。
市長
日本人には、論争や論戦を避ける傾向がありますね。
現実の社会に出てみると、そういった場面は山ほど出てきますが、論争に慣れていないために避けてしまう、あるいは攻撃的に出ることがあります。
小さい時に経験したうえで他者を思いやる考え方をもつことが大切ですね。
豊中市を選んでもらうために必要なこと
市長
豊中市を、安心して子どもを産み、育てることができるまちにしていきたいと思っています。
より多くの子育て世帯に豊中市を選んでいただくために、これから必要なことはなんでしょうか。
理事長
第一に、経済的負担の軽減だと思います。
すでに幼児教育、保育は無償化になっていますが、0歳から2歳はまだ所得に応じた形で保育料を支払っており、無償化になっていません。
その部分がもう少し軽くなればと思います。
次に、「安心・安全」です。
道路が狭く、バギーを押して歩きにくいこともある。
保護者は前と後ろに子どもを乗せて自転車を走らすこともあるので、どこに行っても安心・安全が確保されているということは必要だと思います。
市長
ハードとソフトの両面でしっかりとまちづくりを進めていかないといけません。
そのためには、まず子育てについてのご家庭のコストを減らすことが必要です。
子育てへの投資として財源を充てることにより、子育て世帯に選ばれるまちにしていきたいです。
今後、2人目の子どもの保育料の無償化や、子どものインフルエンザ予防接種について1回2,500円を助成するなど、子育て施策に対して財源を充てていきます。
理事長
例えば、フランスの保育所では何も気にせず子どもを預けられる。
コストもかからないし、おむつの心配もいらない。
食事も用意できている。
懇談会や参観もありません。
なぜなら「私たちは完璧に保育しているから」だということです。
豊中もそのようになってほしいと思います。
豊中では、あなたが選んだ保育施設は1番ベストな回答ですと言えるようにしてあげたいですね。
保育の質の向上
市長
量が確保できてくると、次は質ということになります。
質の観点でいうと、豊中はこども財団があり、幼稚園から認定こども園、様々な事業者が協力して質の向上に努めていただいています。
理事長
現在、99施設がこども財団に参加しています。
こども財団と豊中市で作成した教育保育環境ガイドラインを各施設で共有し、質のベースを合わせるように取り組んでいます。
また、子どもが減少してきていますが、それで施設や職員の数を減らすのではなく、その分、1施設あたりの規模を小さくし、子どもたちに目がよく行き届くような保育環境にしていきたいです。
豊中市では、1歳児クラスでの保育者と子どもの比率を、国基準の1対6から1対5にしていただいています。
豊中市には、ゆとりのある保育環境があるということが、保護者にきちんと理解されるよう発信することも必要だと思います。
市長
豊中の小学校では、国の基準より早く、4年生までの35人学級を達成できています。
小学校5年生からは教科担任制も導入しています。
教育保育の質については、特にこれから自治体間の差が出てくるのではないでしょうか。
豊中には、戦前から幼児教育について質の高いサービスを牽引してきたという土壌があります。
これも教育文化都市として誇れるところだと思います。
こども財団と豊中市の連携
市長
こども財団と豊中市が連携してできることや、「健やかに育ち 楽しく学ぶことができるまち とよなか」として市に期待することはありますか。
理事長
こども財団では、親子で観劇してもらったり、音楽を聴いてもらったりする場を設定していますが、もっと活性化していきたいと思っています。
せっかく文化芸術センターのような素晴らしい建物があるのだから、日本センチュリー交響楽団などとコラボするなど、子どもにも理解できるようなクラシックや美術展を開催したいと思っています。
子どもたちをもっと芸術へ引き込んであげるようにしていきたいです。
市長
豊中市では、子どもたちにフルの生オーケストラを楽しんでもらえるよう、「ホールでオーケストラ」という事業を行っています。
これは、日本センチュリー交響楽団の協力のもと、中学生に本格的なオーケストラを楽しんでもらうものです。
昨年からはさらに、小学校4年生にも体験してもらうようにしました。
子どもたちはフルオーケストラを体験し、すごく心に残ったようです。
できれば幼児期から、フルオーケストラとまではいかなくとも、生の楽器の音を聴いてもらう機会を作っていきたいですね。
理事長
今後は直接経験や直接体験が重要になってくると思います。
これからは、メタバースなど、バーチャルな脳の中で動くような世界になっていく。
しかし、幼児期はそうではなくて、泥んこ遊びもして、水に入り魚を捕まえたり、野原を駆け回ったりする生活もどこかに記憶として残してあげたい。
本物に触れ合うチャンスが多ければ多いほど、直接経験、直接体験になります。そこから気づいて音楽や芸術の道へ進んでいく子どもたちもいるので、いろんな種まきは必要だと思います。
市長
いろいろな機会が、子どもたちにとっての進むきっかけとなれば嬉しいです。
理事長
子どもたちが幼児期、小学校時代を豊中で育ち、次にどこへ行くかはわからないが、また戻ってきてくれます。
子どもたちにとって、懐かしさを育めるような豊中になればと思います。
記憶に残るようなまちづくりをしていくと、いつかまた豊中に戻ってきてくれるのではないでしょうか。
市長
私も豊中市を帰巣本能が働くようなまちにしたいと思っています。
大人になり、一時期は大学あるいは就職して豊中市外に出ることはあると思いますが、結婚をした時には豊中市へ戻ってきて子育てをしたいという気持ちをもってもらえると嬉しいです。
子どもたちの未来のために
理事長
MECC(メタ・エデュケーション・カルチャー・シティ)というキャッチフレーズを考えました。
教育や文化など、あらゆるものを融合包括し、さらにそれを超え、豊中市全体が盛り上がっていけるようにするのはどうでしょうか。
市長
いいですね。
では私はTYM、「とよなか 夢 みらい」でいかせていただきます。
子どもたちの夢と希望にあふれる、未来につなぐまちづくりを進めていきたいです。
理事長
未来が語れるまち。
私は子どものころに、大きくなったらどんなまちに住みたいかなと想像しながら絵を描きました。
そのころは鉄腕アトムが流行っていたので、空飛ぶ大きなものが浮かんでいて、そこに住んでいたりといった絵を描きました。
そういった楽しい未来をイメージできるような子どもたちが、たくさんいてほしいなと思います。
市長
夢を頭の中に描けるようなところに住んでほしいですね。
これまで、子どもに関することは義務的経費ということで、負担感ばっかりを予算配分の中で議論してきました。
しかし、視点を変えれば、これもできる、あれもできるといった機会の創出は、子どもたちの伸びにどれだけチャンスを生むでしょうか。
そういった観点でものを考えていくようにしています。
今日の議論をきっかけにまた新たな予算化をしっかりと考えていきます。
そして、子どもたちに投資することによって、子どもたちが未来を選択するための選択肢やチャンスを増やしたいと思います。
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